太陽に手を伸ばす少女
◁◁◁


その日は稀に見る豪雨の日だった。
遠慮を知らない突き刺さるように降る冷たい雨。

そして私の目の前には転けそうになりながらも逃げ続ける1人の男は既に頭や腕から血を流し至るところが赤く染まっていた。

路地裏に入ったところで無造作に置かれた煉瓦に躓き、転んだ。


『ヒッ』

『…はぁ…。逃げたって状況は変わらないんだから無駄に体力使わせないでよ』

『ぁ、ご、ごごめんなさっ』

『“裏切り者は許さない”って、私達のルール分かってるよね?』


男の髪の毛を掴み、無理矢理引っ張ると私の動きに合わせて追いかけるように男の体は起き上がり地面に半分座り込むような体勢になった。

震える手が私の腕に縋り付くように触れる。


『おっ、俺はただっ…!ただっ、指示されてっ、』

『うん、だからそれは誰ってさっきから聞いてるよね?』

『それはっ』

『あぁ、でもあんたは私よりそいつを選んだって事になるよね?』

『違っ、す、みませっ、』

『あんたは私の事裏切らないと思ってたのになぁ』

『ぉ、脅されたんですっ、だから、仕方なくてっ』


こんなに雨が降るなら髪なんて下ろさなかったのに。
雨で濡れて巻きは取れるし至るところに張り付いて鬱陶しくて仕方がない。


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