太陽に手を伸ばす少女


落ちてくる髪を耳に掛け直し、男がさっき躓いて転けた煉瓦を手に取り見えるように振り上げた。

今からこれで貴方を殴りますよ、と分かるように。
その意図が伝わったのか私の腕を掴む手に力が入りやめてくれと頭を左右に振る。


『っ、真央です!!!湯江真央!!』

『……真央?』

『アイツは、ルナさんの地位を狙ってたんですよ!!!だから、退けさせる為にっ、俺をっ……』

『……』

『俺、もうここ辞めたくてっ…。それがアイツにバレて、大人しく辞めたかったら言う事聞けって、じゃないと、殺すって…、だから俺っ、恐くて、』


大切にしたい人ができたから、と泣き叫んでいる。


『……真央が、私を…』


何かやっている事はなんとなく把握していた。
だがそれは個人の仕事に関係しているものだと思っていた。

……あんなに毎日ルナちゃんルナちゃんと後ろをついて回っていたのに。

最悪だ。そんな近しいところに裏切られていたとは。


『許してくださっ』


振り上げたままの煉瓦を許しを乞う男の頭に目掛けて思い切り振り落とした。

…裏切った事には変わりない。
ルール違反には罰を与えなければならない。


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