太陽に手を伸ばす少女
『はぁ……』
出血が止まらずに赤黒い液体がゆっくりと地面に広がっていく。
動かなくなった男を見下ろして思わずため息が出た。
…いや、こんな事をしている暇なんてない。
こいつが言うように真央が私を陥れようとしているのなら証拠を集めて対処しなければ。
冷静に、且つ冷静に。
ハナに連絡しないと。
持っていた煉瓦をそこら辺に投げ捨て、ポケットからスマホを取り出し、血で濡れた手を服で拭い雨から庇いながら連絡先を辿る。
スマホを触りながら路地裏から出ると後ろからパシャパシャと水溜まりを走る音が微かに聞こえた。
『ルナ!』
なんてタイミングがいい。
ちょうど今ハナに電話をかけようと思っていたんだ。
『ハナっ、』
今すぐ確認したい事があるから頼まれてくれない?
きっとハナは私のその頼みをふたつ返事で引き受ける。
その時だった。
鋭いブレーキ音と耳に劈く程のクラクションが聞こえたのは。
反射的にその音がした方を振り返ると、もうどうにもならないくらい目の前にトラックが迫っていた。