太陽に手を伸ばす少女
「お前ら、やっぱり【夜烏】なんだろ?」
俺の言葉に2人の動きがピタリと止まり、2人同時に視線が俺へと向けられた。
「あの雨の日、羽宮の背中の刺青見たよ。その後のそこの男の雰囲気とか色々な。もしかしてって思ってたけど…」
「背中に刺青なんて誰にでも入ってるよ」
「色んな噂は聞いた事あるけど、夜烏の頭は女。それに背中に大きく刺青が入っていてピアスも多い」
「不確定事実だね。そんなの、誰だって当てはまる」
「“突如消えた夜烏の頭”」
「……」
「お前、なんでそんなに詳しいんだよ」
「調べてたから、個人的に」
冷えた風が俺達の間に入り込むように吹いた。
ふわりと揺れた羽宮の髪から覗く真っ黒な目は真っ直ぐに俺を捕らえていて逸らされない。
「ずっと探してる人がいる」
「……どんな人?」
「兄貴だ。俺が子供の頃に家を出てったっきり帰って来なくなった」
「普通に家出なんじゃないの?」
「違う!兄貴は、そんな事するような奴じゃない!」
「いくら家族でもその人の全部を知ってるとは限らないでしょ」
「そもそも、その失踪と俺らがなんの関係があんだよ」
夜烏は知る人ぞ知る組織。
組織全体は闇に隠れるように黒く、その姿をなかなか現さず静かに執行する警察も追い切れない組織。
鴉のようにさり気なく日常に紛れ込み、その情報量は尋常ではないと聞く。
名前をなさずメンバーの出入りも激しいと噂に聞いた。
ただ誰かが、彼らを【夜烏】と呼び始めたのだ。
「……兄貴の情報が欲しいんだよ。俺も夜烏に入れてくれ!!」