太陽に手を伸ばす少女
両親は居ないに等しかった。
父親の記憶は毛ほどもないし、母親は適当な奴だった。
仕事と称し家に帰って来ない母親を兄貴と2人で待つ生活。
ほぼ2人暮しの状態で俺らは祖母の家に引き取られる事になった。
自分の娘ながら情けないと、育て方をどこで間違えてしまったのかと祖母はよく言っていた。
兄貴は優しかった。
面倒見がよく、「お兄ちゃんだから」と俺に良くしてくれた。
中学だって、高校だって…。
兄貴は急に帰って来なくなった。
たまに帰って来たと思ったら深夜で、しかも傷だらけで顔には痣が出来ていたし、下手すりゃ口元は切れて血が滲んでいた日もあった。
『兄貴!今までどこに居たんだよ!』
『…ほっとけよ』
祖母はそんな兄貴を冷たい目で見るようになり、居ないものとして扱った。
『兄貴、またどっか行くのか?』
『━━━さんが俺を待ってんだよ、行かないと…』
『え?何誰?誰かに会ってんの?なぁ、兄貴っ』
『もう疲れたんだよ、お前の兄貴やんの』
『えっ』
ピシャリと冷たく閉められた扉。
それが最後に見た兄貴の背中だった。