太陽に手を伸ばす少女
#5
ツミキ リンタロウ ノ ソノゴ
土曜日の朝、珍しく自然と目が覚めた。
二度寝しようと目を瞑ってもなかなか眠れずスマホを開く。
あれから、羽宮からの連絡はない。
もちろん学校に来る事はなく、いつの間にか退学したと噂が流れた。
詳しい事を聞こうとも思わなかった。
彼女は元いる場所に戻ったのだと分かっていたから。
カタン、と玄関の方から音がして普段なら気にならないはずのそれが気になり導かれるように玄関へと向かった。
その音はポストに入れられた封筒だと分かった。
A4サイズのどこにでもある封筒がただ入れられている。
《積木 麟太郎 様》
とだけ書かれた封筒の違和感はすぐに気付いた。
表にも裏にも住所が書かれていないし、郵便局の消印どころか切手さえ貼られていない。
…という事はこれは。
バンッとドアを開け掛け走った。
朝方特有の冷たい風と空の明るさ。
誰も居なかった。
「はぁっ、はぁ、はぁ…」
白くなった息だけが空中に浮いてすぐに消えていく。
ぎゅっと、封筒を握り締め部屋に戻った。