太陽に手を伸ばす少女
ヤヨイ ノ ソノゴ
「……何やってんだよ。しっかりナイフ持てって、ほら再開!」
「ひっ、」
産まれたての子鹿のように脚をカクカクさせながら何とか立ち上がった浅田は真央に向けてナイフを振りかざす。
未だ弱音を吐かず、ただ俺を疎ましそうに睨む真央に腹が立つが自分の立場が分かっているのか言われるがまま大人しく俺の指示に従う。
浅田は恐らく精神的にもギリギリだろう。
今が何時で朝なのか夜なのか分からない窓がない豆電球のみの薄暗い地下室。
拷問器具が豊富に並べられ、床には血が散乱してもいいようにブルーシートが敷かれていた。
「殺したら駄目だからなあ」
まだ殺さない。死なせてあげない。
日毎を追うにつれ、浅田はうわ言のように「殺してくれ」と呟くようになった。
自分が尊敬し崇拝し大好きでやまない真央を傷付けるのは本人にとってとても負担なのだろう。
反対に真央は俺を恨んでいるようだった。
カンカンカン、と階段を降りる音が聞こえそちらに視線を向けると縹が俺に手を振っていた。