太陽に手を伸ばす少女


『ねぇ、ちょっと。臭いんだけど』

『しょうがねぇだろ。た、ば、こ』

『私と居る時煙草やめてくんない?』

『は、無理。俺にとってコレは精神安定剤なんだよ』

『ただのヤニカスだろうが』

『あ"ぁ?』



後部座席の背もたれに体重をかけて座る。
薄く開けた視界には次々と変わっていく景色がボヤけて見えた。

あんなしょうもないやり取りさえ懐かしいものになってしまうとは。

そもそも「久住さん」なんて呼び方は鳥肌が立つほど気持ち悪い。
いちいち以前のツキと比べて女々しく思いふけっている俺も相当気持ち悪いが。


「すみません、渋滞で…。久住さん?」

「着いたら起こしてくれ。それまで仮眠をとる」

「分かりました」


目が覚めたらどうか以前のツキに戻っていないだろうか。
そんな都合がいい事を考えながら目を閉じた。


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