太陽に手を伸ばす少女
エントランスを出るとそこにはやっぱり前と同じ、黒い車が停まっていた。
そして私の前を歩く久住さんが近付くと、運転席から前と同じ男の人が降りて来てドアを開ける。
「悪いな、朝早いのに」
「いえ」
今日もシワ1つない綺麗なスーツを着ている。
こんな明るい時間に見たのは初めてで改めて見るとなんだか知っているような、知らないような気もする。
「……どうかされましたか?」
「えっ、あ、いや、おはようございます…」
「はい、おはようございます」
見過ぎてしまっていたのか、不意に目が合ってニコリと微笑まれてしまった。
ドアを開けて待つ彼を横目に急いで久住さんの隣に乗り込んだ。
やはりと言うべきか、車内に会話は何一つない。
運転手の人も何も喋らないし、久住さんも窓の外を見ているだけで何も喋らない。
しばらくすると窓から校舎らしきものが見えて急に緊張しだした。
「…なんだよ、急にソワソワしだして」
「急に緊張が…」
「さっきまで第一印象が大事とかなんとか言いながら前髪弄ってたクセに、今更かよ」
そう言ってケラケラ笑いだした久住さんに腹が立った。