太陽に手を伸ばす少女
『別にぼっちだったわけじゃねぇよ?』
『えっ、そうなんですか?』
『お前がここに入院してるって知らねぇから来ねぇんだろ』
『え、なんで?教えてないんですか?』
『教えたくないから』
『はっ?……じゃあ、私には友達も恋人もいるんですね』
『…さぁ?どうだったかな』
『はぁ?もう、なんなんですか?』
『なんだよ?』
久住さんは私が聞く質問に時々困ったように笑う。
眉を八の字にして悲しそうな、そんな感じ。
それに肝心なところはのらりくらり躱されて結局必要最低限の事しか教えてもらっていない。
『なんでそんなに知りたがるんだよ』
『当たり前でしょう!私は今までの事、何も覚えてないんですから』
『……別にさ、』
『早く思い出して、皆に会いたいんです!』
『皆って。覚えてねぇくせに』
『それは久住さんが教えてくれないから!…私本当に貴方の事信頼していいんですか?』
『他に誰か宛にできる奴いんの?』
私は久住さんの事を何も知らない。
一体どんな仕事をしてどんな性格か、何が好きで何が嫌いなのか。
彼は多分私のそれらを知っている。
彼の言う私についてが本当の事なのか分からないけれど、たまに見せる小さな優しさが私が彼を信頼する理由に繋がっていた。