太陽に手を伸ばす少女
「なん、で…」
「お前はそういう奴だったから」
「前の私って、一体どんな…」
「あれっ?ツキ?おはよー!」
黒く渦巻く何かに飲み込まれるような感覚から一変して明るい声が聞こえ振り返った。
「あ、おはよう…」
同じクラスの隣の席の子だった。
「何してんの?早く行かないと遅刻するよ?」
「あ、」
蒼井さんが居たはずの方を振り返ると今まで一緒に居た事が嘘だったかのようにいなくなっていた。
立ち去る気配も音も、何もしなかったのにいつの間に…。
「ツキ?」
「あ、ううん!なんでもない、行こっか」
久住さんとはどこか違う『よく知ってる』という言葉の意味。
─────『お前がそうやって平和に明るく暮らして、お友達なんかも作って楽しく暮らせるのは今だけだ』
少しだけ記憶が戻る事が怖くなった。