太陽に手を伸ばす少女
「っおい!どうした!?」
倒れそうになった私を蒼井さんが支えてくれて、地面に叩き付けられる事はなかった。
「ゆっくり息しろ!」
息苦しさから逃れるように蒼井さんの腕をギュッと掴み呼吸をなんとか整え、慌てて掌を見ると血どころか何も付いていなかった。
「…ツキ?大丈夫か?」
「ぁ、わ、私っ、」
「……」
さっきのが本当なら私は、人を……。
そう考えると全身の震えが止まらなかった。
「耳塞いでここで待ってろ」
未だボヤける思考回路の中、蒼井さんの言葉だけがすんなりと入ってきて言われた通り耳を塞ぎその場にしゃがみ込んだ。
耳を塞ぐ手の隙間から誰かの声と何かの音が微かに聞こえたが、そのほとんどが私の荒い呼吸と心臓の音で掻き消された。
「おまたせ」
トントン、と優しく肩を叩かれ顔を上げるとぐったりとした麟くんを抱えている蒼井さんが私を何もなかったかのような清々しい表情で見下ろしていた。