太陽に手を伸ばす少女


ぱっと手を開き髪から手を離すと「ありがとうございます」とニッコリ笑顔で言われた。

軽く髪を整えている縹を睨んでもニコニコとされるだけで効いちゃいない。
むしろ俺の反応を面白がってるようで腹が立つ。


「驚きましたよ。貴方が何も言ってくれなかったから」

「……」

「まさかあの冷酷無慈悲なルナが記憶喪失で、今はどこにでもいるような女子高生として普通に生活してるなんて」


そんな事誰が想像できるって言うんですか、と縹は言った。


「おかげでめちゃくちゃ怖がられたし。物凄く不服です」

「調べが悪かったんじゃないのか」

「はぁ?そもそも俺らが見つけられない訳がないでしょう。…まぁ、それは貴方も想定済みだったんですね、こんなセキュリティ抜群なマンションに住まわせてるくらいだから」

「俺もまだまだだな、」

「仇になりましたね、普通の高校生がこんな所に1人で住めるわけがない」


この場で気絶させ、無理矢理車に乗せて何処か山奥で始末してやってもいい。……普通の人間なら。

でもこいつはあのルナの隣にいた男だ。
そう簡単に事を進める事は不可能に近い。


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