太陽に手を伸ばす少女
「何が目的だ」
「ルナが居なくなったウチは今収拾つかないくらいめちゃくちゃなんですよ。俺じゃ彼奴らを纏める事が出来ないから」
困ったなぁ困ったなぁ、と猫なで声で気持ち悪く声を出し、その目は絶対に逃がさないとでも言うように俺を捕らえていた。
柄にもなく、ゾクリと鳥肌が立つのが分かる。
「荒療治ですけど、無理矢理にでも記憶を取り戻してもらわないと本当に困ります」
「そんな事させるわけねぇだろうが」
「まさかこのまま、記憶が戻らないままでも良いって言うつもりじゃないですよね?」
「……今のアイツは何も知らないんだよ」
「無知は罪。今までしてきた事は消えませんよ?」
「…縹、」
「まぁ、そう言うと思いました。多少はこちらの事も考えて欲しいんですけどね」
やれやれ、と海外ドラマのようなわざとらしいジェスチャーまで付けてくれた。
今朝、ツキからのメールで嫌な予感はしていた。
十中八九コイツの事だろう。
「とりあえず今日は帰ってくれ」
「……電話、ちゃんと出て下さいね」
ニッコリと貼り付けたような笑顔を見せた後、縹は暗闇に溶けるように消えた。