太陽に手を伸ばす少女
▷▷▷



『ハナちゃん。…ねぇ、ハナってば。何してんの?』



夜を生きて夜を支配する女王様。
俺らにとって、ルナは圧倒的存在。
崇拝に近いこの気持ちを語るならいくらでも語れる自信がある。

俺の記憶にはしっかりと刻まれている。
ルナとの、……ツキとの記憶が。



『……蒼井さん?』



気持ち悪い。
その声で、その顔で、その姿で、俺の名前をそんな風に呼んでくれるな。
敬語なんて以ての外だ。
俺に使う必要は1ミリもないのに。



『…っ、ルナ!!!』

『はなっ、!』



“あの日”の記憶が脳裏を過ぎる。
稀に見る豪雨で突き刺すように土砂降りだった。
ルナを探して走り回ってやっと、…やっと見つけたというのに俺の目の前で……。


「っ、…チッ」


ツキが居る街から県を跨ぎ、随分離れている此処。
ツキが居たという居場所はしっかり残っているし、なんならさっきまで居たかのような形跡まである。

あの事故以来、ツキは突然姿を消した。
運ばれたはずの病院にはおらず、病床はもぬけの殻だった。
すぐに周辺を捜索させたが見つかる事はなかった。

…そりゃそうだ、あの久住が手を回していたんなら上手い事やって探すのにも時間がかかる。


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