太陽に手を伸ばす少女
「いってぇ」
「ルナちゃんは?」
男にしては少し高いトーンの独特な声。
久住とは比にならない力で髪を引っ張られた。
「どいつもこいつも人の髪の毛引っ張りやがって、クソが。禿げたらどうしてくれんだよ、俺の毛根が可哀想だと思わねぇのか」
「思わない。どうでもいい。僕は“ルナちゃんは?”って聞いてる」
「………」
ここに居る奴らは全員、ルナ狂いだ。
ルナだけ、ルナの言う事しか聞かない奴もいる。
浅田も、こいつも例外じゃない。
「おい、縹。早く答えろ。お前なんか簡単に殺せるんだぞ」
「ははっ、じゃあ殺せば?ルナがそれを許してくれるかは分かんねぇけどな」
「あ"?」
「お前さ、この状況下でどさくさに紛れて好き勝手やってるらしいじゃねぇか」
「お前には関係ない」
未だ髪を掴み続けるこいつを背もたれに寄りかかり下から見やる。
手がピクリと反応したのが分かった。
…図星かよ。
ルナが居なくなったという事はこの夜の統率者が居なくなったという事。
今まで大人しくしていた奴らがのそのそと動き出そうとしているのを肌で感じていた。
簡単に言えば、封印を解かれた妖怪みたいな。