太陽に手を伸ばす少女


柔らかいソファに座って彼について考えていると再びスマホの通知音が鳴った。


《夕方には戻るから》
《何かあったらすぐ連絡しろよ》


絵文字1つもないシンプルな文面。


《分かりました》


私もシンプルな返事を送ってスマホを閉じた。

夕方までまだ時間がある。
部屋を見渡すと所々にまとめてダンボールが置かれていた。
…今日引っ越してきたばかりだというのに、荷物が本当に少ない。

家具家電や消耗品は全て新しく久住さんが揃えてくれていて、前に私が住んでいた家から彼の判断で持って来られたのは数個のダンボールだけだった。


その中身は必要最低限の洋服や使いかけのスキンケア用品、メイク道具くらいしか入っておらずなかなか以前の自分の事を掴めない。

その少なさから荷物の整理はあっという間に終わってしまい、やる事がなくなってしまった。

…かといって1人で外に出る度胸もないし、なんなら勝手に出掛けたら怒られそうだし。
そう思いながらスマホを手に取って再びソファに座った。


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