太陽に手を伸ばす少女
「あ、名前…分からない、から…」
「あ、そうだ、ごめんね。僕の名前は湯江 真央っていうの」
「湯江、くん?」
「真央」
「真央、くん…」
「だーめ!呼び捨てにして!」
「えっと、……真央、」
「ふふふっ、うんうん!もう1回呼んでっ?」
「真央」
「はぁぁ!もうほんと、ルナちゃん大好き!!」
私の首筋に顔を埋め、ギュッと抱き締める彼に下心は1ミリも感じない。
そして、またしても私ではない誰かの名前。
やっぱり皆、私の事を“ルナ”と呼ぶ。
真央は私の顔を見たりギュッと抱き締めたりを数回繰り返してルンルン楽しそうに堪能している。
「ルナって、誰の事?」
「ん?あ、そうだね、それも忘れてるんだ…。ルナちゃんはねっ、」
何か言いかけた時、私の背後から真央を狙って誰かの足が伸びてきた。
いきなりの事で私は固まったまま、真央は私から素早く離れ背後にいる誰かを今までのキラキラした目が嘘のように恐ろしい目付きで睨んでいる。