太陽に手を伸ばす少女
こういう時は慌てると逆に悪い方向へと向かう。
冷静に、かつ確実に。
スマホに入っているGPSアプリを開き、ツキのスマホの居場所を辿った。
学校と家の間でGPSは止まっている。
「どっ、何処に向かえば!」
「ここだ、とりあえずここに向かえ」
「分かりましたっ!」
ツキがたまに見せる瞳が好きだった。
何も映していないような真っ黒でどこか遠くを見つめる目が、俺を真っ直ぐに捕らえた瞬間のあの瞳。
その度に引きずり込まれる様な感覚に襲われた。
『毎日似たような事ばっかでつまんない。ねぇ、何かないの?』
『何かってなんだよ』
『アンタと居たら面白そうだったから一緒に居るのに、こんなつまんないと意味ないじゃん』
『俺を暇潰しに使うなよ』
『………ほんっと、つまんない男ね』
軽口を言うくせになんだかんだ傍に居るのが素直じゃなく、彼女らしい。
「久住さん!」
「ここで待ってろ」
車から降り、妙に静かな歩道。
人通りも少なくまるでゴーストタウンだ。
異様な雰囲気を漂わせる路地裏をそっと覗くと、その光景に息を飲んだ。