太陽に手を伸ばす少女
「…何があったんだよ、」
そこには血まみれで倒れている男と、壁に寄りかかって座り込んでいる縹とその隣に気を失っているのかぐったりとしたツキが居た。
「おい縹、何があったんだよ。説明しろ」
「俺だって分かりませんよ。真央がツキに触れた瞬間に…、ルナみたいになって、」
倒れている男のこの惨状はツキがやったのか。
男に近付き確認するとまだ息があり死んではいない。
少し離れた所で待機している兼本に手を挙げここに来るように呼んだ。
「っ、久住さん、これは…」
「とりあえずツキを車に運ぶぞ」
「でも、血だらけじゃないですか!病院に…」
「馬鹿か、連れて行けるか。病院に連れて行ったら何があったのか説明、警察も呼ばれて事情聴取にでもなってみろよ。最悪今までの事までバレて捕まるぞ」
「だけど、」
「ツキに付いてる血は真央の物だ。ツキには一切傷がないはずだ」
縹はゆっくりと立ち上がり、兼本に視線を移す。
「お前は怪我は?」
「かすり傷程度ですよ、心配する程でもないです」
「そうか」
「真央はこちらに任せてください。事情もまぁ、どうにかします」
「すまんな、俺のせいにしていいから」
路地裏の目の前に車を回し、ツキを姫抱きにしてそっと後部座席に寝かせた。