太陽に手を伸ばす少女
「…まだ、隠すんですか」
「…」
「本人は知りたがってます、自分が一体何者なのか。結局は思い出す羽目になる、知る羽目になるんですよ」
「…分かってる」
人通りが少ないとはいえ、人に見られるのは避けたい。
どちらにしろこの場は縹に任せ、俺らは素早く退散した方がいいだろう。
縹の言う通り、ツキに目立った傷は1つもない。
どれもあの男の物らしい。
バックミラー越しにチラチラとこちらを伺う兼本と目が合った。
「おい、運転に集中しろ」
「す、すみませんっ、」
…ひとまず家まで送って、後でまた事の詳細を縹に聞いて目が覚めたらツキにも…。
するりとツキの頬を撫でた。
膝の上で目を瞑るツキは起きる気配がない。
これで記憶は戻るだろうか。