太陽に手を伸ばす少女
「おい、ツキ!」
「はっ、…ぁ……久住さん、」
「魘されてたけど、大丈夫か?」
視界に広がるのは心配そうに私を見つめる久住さんとその背後に見慣れた天井。
「……私、」
汗でびっしょり張り付いた前髪をかき分け、さっきの夢を思い出す。
まるで、リアルだった。
起き上がろうとした瞬間に右手にピキッとした痛みが走り、手を見ると手の甲が酷く荒れて赤黒くなっていた。
「何があったか覚えてるか?」
「…すみません、」
「以前の記憶は?」
「まだ、何も……」
「そうか」
確か、真央という男の子と出会って話してたら途中で蒼井さんが来て……。
えっと、2人はなんか言い合いしてて喧嘩っぽくなって…。
ダメだ、そこまでしか覚えていない。
「無理しなくていい」
「…あ、そういえば蒼井さんは?あの後どうなったんですか?」
「かすり傷だけで心配する必要はない。俺が来た時にはもうピンピンしていた」
「そっか、良かった…」
私自身も右手以外特に痛いところはない。
きっと、蒼井さんが守ってくれたんだ。