太陽に手を伸ばす少女
「…やっぱり、思い出して欲しいですか?」
「……………まぁ」
私がお弁当の棚を見ていると自然と隣についてきた蒼井さんは間の空いた返事をしながら目が合う事はない。
「思い出して欲しいよ。今までの事も、…俺の事も」
少し長い前髪で隠れた目元。
初めて聞いたその本音に胸がぎゅっと締め付けられるような感覚がした。
「てかお前、なんであの時真央と居たんだよ」
「なんでって、体調悪そうにしてたから心配でつい声をかけたんです」
「は?心配?今のお前からしたら知らねぇ奴だろうが」
「?、はい。知らない人でも目の前に困ってる人が居たら助けるのが普通なんじゃ」
「………」
この会話、なんだか前もした気がする。
今まで目が合わなかったのにその目は今、私の事をありえないという顔として当てられた。
今度は私がその目を逸らして、数少ない目の前のおにぎりを2つ手に取った。
「もしかして前の私は目の前に困った人が居ても助けない人だったんですか?」
「あぁ、見た事がない。何もなく善意で人を助けるところなんか」
メリットなんてこれっぽっちもないのに動くのはありえない。
…なんという奴なんだ。