太陽に手を伸ばす少女
─────『麟くん!』
どんなに素っ気なくしても、馬鹿みたいに真っ直ぐ俺を見て笑ってしつこく話しかけてくるその姿はどれも俺にとって眩しかった。
ずっと灰色だった世界に、光が差し込んだような。
明るい所へ連れ出してくれるような感覚がした。
「お前、羽宮の事好きなのか」
「……それ、俺のセリフでもあるんだけど」
羽宮が今までどんな人間だったのか、どんな暮らしをしていたのかどうでもいいと思ってしまう。
暗いところに居たのなら、俺がその手を引っ張って助けてあげたいとも思うし、このまま何もかもを思い出さずに純粋に笑ってて欲しいとも思う。
…その笑顔を守るのは俺でありたいとも。
「…俺は、……俺が、羽宮を幸せにしたいと思ってる」
「は?」
「俺は多分、羽宮の事が好きだ」
「………」
閑静な住宅街にギャハハという笑い声が響いた。
「ぶふっ、くくくっ、やめてくれっ、腹痛てぇ!」
「何がそんなに面白い」
「…はぁ〜あ。記憶がなくても、やっぱりあいつはあいつなんだな」
「はぁ?」