太陽に手を伸ばす少女
「残念ながらな、ツキは幸せになりたいだなんて1ミリも思ってねぇよ。ましてや幸せになるつもりなんて毛頭ない」
「そんなのお前に分かるわけねぇだろ」
それまでゲラゲラと笑っていたはずの表情はいつの間にか感情が全て抜け落ちたみたいに消えていて、ぐるぐると真っ黒な目で俺を見ていた。
「……分かるよ。今まで簡単に口では言えないような事を平気でしてきたんだ。だから自分だけ幸せになろうなんて事思わねぇんだよ」
「な、」
「俺はお前がこれからも知る事がないツキの“隅々”まで知ってる」
だからその無駄な感情は捨てて諦めろ。
そう言い残し、男はどこかへ行った。
ドクン、ドクン、と胸が鳴る。
羽宮とあの男は一体何者で、どんな関係だったのか。
震える手を隠すようにポケットの中へと入れた。