太陽に手を伸ばす少女
シノビヨル テ
気付けばもう7月半ばになっていて、梅雨なんてだいぶ前に終わりもうすぐ夏休みがやってこようとしていた。
その間、蒼井さんとたまにメールでやり取りしていたり朝は相変わらずマンションの前に立っていて当たり前のように近くまで一緒に行く。
夏休み前の土曜日、私は久住さんと一緒に買い物へ出掛けていた。
「夏休みどっか行きたい所あるか?」
「…ない、ですね」
「じゃあ、欲しいものとかは」
「……ないですね、」
「………」
なんなんだお前、という視線を横から感じる。
そんなに見られたって私に行きたい所も欲しい物も現れないんだから。
「女子高生ってなんかもっとこう、欲で塗れてるんじゃねぇの?」
「…すみません」
そして私も、相変わらず記憶は戻る事なくその気配さえも最近は全くない。
あの時、湯江真央という男の子に襲われたあの一瞬だけ。
久住さんはそんな私に特に何も言わず大丈夫だと言ってくれたのは最近の事。