太陽に手を伸ばす少女
「…んな無理に思い出そうとしなくてもいいだろ」
「でも、」
「時間はたっぷりあるんだから、ゆっくり思い出していけばいいって言ってんの」
「それは、そうですね…」
自分の事を何一つ覚えていない自分に少し焦っていたのかもしれないと思った。
そう言われれば、何も言い返す言葉が見つからずそれ以上何も話さなかった。
気が付くとレンガ調のファミレスに着いており、久住さんと一緒に店内へ入って行く。
「いらっしゃいませー。2名様ですかー?」
「はい。あの奥の席いいですか?」
「はい、お好きな席へどうぞー」
夕方という事もあり、チラホラと店内にはお客さんがいた。
「…何食う?」
「どうしよう。…久住さんは?」
「俺チーズハンバーグ」
「…ん〜、私はパスタですかね」
「……そうか」
お冷を持って来てくれた店員さんにそのまま注文した後、私達の席には妙な沈黙が生まれて気まずい空気が流れた。