あのね、わたし、まっていたの  ~慈愛の物語~ 【新編集版】
       ◇ 秋村色葉 ◇
          
 スポーツ中学校の校長就任を断った秋村だったが、何故か頭のどこかに引っかかっていて、中学生による非行や虐めのニュースに接する度にそのことを思い出した。
 だからといって引き受ける気持ちになったわけではなかったが、月を追うごとになんともいえないモヤモヤが大きくなっていた。
 
 そんな時、都立体育大学ラグビー部の不祥事を知った。
 監督の顔を思い浮かべると、居ても立ってもいられなくなった。
 それは旧知の人物だからということだけではなく、同じ指導者としての立場から、更に言えば教育というものの根本から来るものでもあった。
 それだけでなく、次第に膨らんできているモヤモヤのせいでもあった。

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