あのね、わたし、まっていたの ~親愛の物語~ 【新編集版】
それは夏休みが始まって2週間ほど経った時のことだった。
「ふ~ん、こんなところに隠れてたんだ」
図書館を出た時、寒田と黄茂井に鉢合わせしてしまった。
「無断で図書館へ行っていいと思ってんの!」
「そうよ。家来は勝手なことしちゃだめなんだからね!」
寒田と黄茂井が口々にわたしを責め立てた。
「見せなさいよ」
図書館から借りた本を入れた布袋から黄茂井が本を抜き出した。
『ハプスブルク家の栄光と滅亡』という本だった。
「何これ!」
黄茂井が空中に放り投げた。
「やめて!」
わたしは落ちてくる本をキャッチしようとしたが取り損なった。
斜めに落ちた本は角が凹んで無残な姿になった。
しかしそれで終わりではなかった。
「勉強できるからって、偉そうにこんな本読むんじゃないわよ」
恐ろしい顔で睨みつけた寒田が本を踏みつけたのだ。
「やめて~」
私は本を取り戻そうとしたが、逆に布袋を奪い取られた。
その上、黄茂井に突き飛ばされて尻もちをついたわたしの太ももめがけて寒田が本を落とし始めた。
布袋を逆さにしてバラバラと本を落としたのだ。
わたしは痛くて惨めで悲しくて泣いてしまった。
その時だった、
「何やってんだ!」
男の子の声がした。
見上げると、大柄な男の子三人が拳を握りながら寒田と黄茂井を睨みつけていた。
「別に、何も……」
寒田と黄茂井が後ずさりした。
自分より大きくて強そうな男子に迫力負けした二人は、すごすごとその場を離れた。
「大丈夫か?」
二人がわたしの手を引っ張って起こしてくれた。
もう一人は散らばっていた本を拾い集めて布袋に入れてくれた。
「ありがとう」
わたしは涙声で礼を言った。
助けてくれたのは『三文字悪ガキ隊』だった。
みんなからそう呼ばれていた彼らは、わたしと同じ4年生だったがクラスが違っていたので話したことはなかった。
しかし、その存在はよく知っていた。
一人は、建十字球人。
野球チームのエースで4番だった。
一人は、横河原秀人。
サッカーが誰より上手だった。
そして、もう一人は、奈々芽速人。
運動会のリレーの花形だった。
三人とも名字が漢字三文字で喧嘩ばかりしていたので三文字悪ガキ隊と呼ばれていた。
それだけでなく、彼らは4年生の中では無敵だったし、上級生からも一目置かれていた。
スポーツ万能で、上級生にも負けない運動能力を備えていたからだ。
それに、ひと際体が大きく、三人とも身長が160センチを超えていた。
「ふ~ん、こんなところに隠れてたんだ」
図書館を出た時、寒田と黄茂井に鉢合わせしてしまった。
「無断で図書館へ行っていいと思ってんの!」
「そうよ。家来は勝手なことしちゃだめなんだからね!」
寒田と黄茂井が口々にわたしを責め立てた。
「見せなさいよ」
図書館から借りた本を入れた布袋から黄茂井が本を抜き出した。
『ハプスブルク家の栄光と滅亡』という本だった。
「何これ!」
黄茂井が空中に放り投げた。
「やめて!」
わたしは落ちてくる本をキャッチしようとしたが取り損なった。
斜めに落ちた本は角が凹んで無残な姿になった。
しかしそれで終わりではなかった。
「勉強できるからって、偉そうにこんな本読むんじゃないわよ」
恐ろしい顔で睨みつけた寒田が本を踏みつけたのだ。
「やめて~」
私は本を取り戻そうとしたが、逆に布袋を奪い取られた。
その上、黄茂井に突き飛ばされて尻もちをついたわたしの太ももめがけて寒田が本を落とし始めた。
布袋を逆さにしてバラバラと本を落としたのだ。
わたしは痛くて惨めで悲しくて泣いてしまった。
その時だった、
「何やってんだ!」
男の子の声がした。
見上げると、大柄な男の子三人が拳を握りながら寒田と黄茂井を睨みつけていた。
「別に、何も……」
寒田と黄茂井が後ずさりした。
自分より大きくて強そうな男子に迫力負けした二人は、すごすごとその場を離れた。
「大丈夫か?」
二人がわたしの手を引っ張って起こしてくれた。
もう一人は散らばっていた本を拾い集めて布袋に入れてくれた。
「ありがとう」
わたしは涙声で礼を言った。
助けてくれたのは『三文字悪ガキ隊』だった。
みんなからそう呼ばれていた彼らは、わたしと同じ4年生だったがクラスが違っていたので話したことはなかった。
しかし、その存在はよく知っていた。
一人は、建十字球人。
野球チームのエースで4番だった。
一人は、横河原秀人。
サッカーが誰より上手だった。
そして、もう一人は、奈々芽速人。
運動会のリレーの花形だった。
三人とも名字が漢字三文字で喧嘩ばかりしていたので三文字悪ガキ隊と呼ばれていた。
それだけでなく、彼らは4年生の中では無敵だったし、上級生からも一目置かれていた。
スポーツ万能で、上級生にも負けない運動能力を備えていたからだ。
それに、ひと際体が大きく、三人とも身長が160センチを超えていた。