あのね、わたし、まっていたの  ~誰か声をかけてくれないかなって~ 【新編集版】
 なんとか学校に辿り着くことができた。
 でも、教室に近づくと、また心臓がドクドクしてきた。
 虐められるのがわかっているからだ。
 寒田と黄茂井の顔が浮かんでくると、足がすくんで動けなくなった。

 保健室へ行こう。

 急に、そう思った。
 それしかないと思った。
 教室の前を通らなければいけなかったけど、二人に見つからないようにうつむいて(・・・・・)いけば大丈夫だと言い聞かせて、足を前に動かした。

 通り過ぎようとした時、「おはよう」という声が聞こえた。
 男の子の声だった。
 顔を上げると、教室の前に三人がいた。
 建十字と横河原と奈々芽。

 私はびっくりして声が出なかった。
 顔を見つめることしかできなかった。

 すると、ランドセルの後ろを押された。
 されるがままに教室に入ると、三人も一緒に入ってきて、わたしの席まで付いてきた。

 椅子に座ると、教室の後ろでこちらを見ていた寒田と黄茂井のところに行った。

 取り囲んだ三人は物凄い怖い顔になった。
 そして、「わかっているだろうな」と言って、拳を握った。
 寒田と黄茂井の顔が引きつったように見えた。
 怖くて声が出なかったのか、二人は無言で頷いて教室から出ていった。
 
 
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