あのね、わたし、まっていたの  ~誰か声をかけてくれないかなって~ 【新編集版】
「やればできるじゃない」

 チョコバナナクレープとイチゴクレープを頬張った二人の前でターゲットは震えていた。
 母親への後ろめたさとエスカレートする要求への不安からだった。
 
 残念ながらその不安は当たってしまった。
 6年生になって別のクラスになったが、そんなことは関係ないというふうに寒田と黄茂井がとんでもないことを言い出したのだ。
 
「修学旅行の時、1万円持ってきなさいよ」

 今までとは桁の違う要求だった。

「それは無理……」

 口に手を当てて呆然とするターゲットに、寒田が最後通牒を出した。

「妹がどうなっても知らないからね!」

 3歳年下の妹に危害を加えると脅されたのだ。

「それだけは止めて」

 すがるように訴えるターゲットに黄茂井の声が突き刺さった。

「妹が死んでも知らないからね!」

 その声が耳に届いた瞬間、ターゲットが崩れ落ちた。

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