あのね、わたし、まっていたの  ~親愛の物語~ 【新編集版】
「いたよ、丸」

 建十字が探し当てた。
 卓球部の丸岡(まるおか)勝人(かつと)だった。
 得意満面な建十字に、「やったじゃん、流石!」と横と斜めがハイタッチした。
 個人情報保護法の影響で生徒名簿が非公開になったため、他のクラスに誰がいるのかわからない状態で見つけたのだ。
 三人は大喜びだった。
 
「あとは、三角と四角か……」

 建十字が呟くと、「ミスミなら知ってるよ」と丸岡が言った。

「ミスミじゃなくて三角!」

 三人が声を揃えた。
 
「だから!」

 丸岡はノートを取り出して名前を書いた。
 
「えっ?」

 覗き込んだ三人は、一斉に驚きの声を発した。
 ノートに書かれていた文字は〈三角〉だった。
 
「これで、ミスミと読むんだよ」

 水泳部の三角優人(みすみゆうと)だった。
 
 次の日、丸岡が三角を連れてくると、「四角は知らないな~」と三角が首を傾げた。

「四角はヨスミとも読めるけど、ヨスミという名前も聞いたことないしな~」と丸岡も首を傾げた。
 追随するように縦と横と斜めが一斉に首を傾げた。

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