あのね、わたし、まっていたの  ~誰か声をかけてくれないかなって~ 【新編集版】
 オーナーに続いて市長と選挙参謀が逮捕された。
 しかし、それだけでは終わらなかった。
 選挙参謀の腹心にも捜査の手が伸びたのだ。
 容疑は犯罪ほう助だった。
 
 彼は夢開中学校の夜間警備員だった。
 予算不足で監視カメラが一台も設置されていない夢開中学校では、見回りの時間を外してこっそりとファックスすることはなんでもないことだった。
 もちろん、手袋をして指紋を残すこともなかった。
 だから、警察の事情聴取に対しては、ファックス送信時間帯には警備室にいたと何食わぬ顔で嘘をついていた。
 しかし、パソコンショップのオーナーが自白したことで、嘘をつき通すことができなくなった。
 彼は共犯の罪で逮捕された。
 
 市長の逮捕を受けて、市議会の対応は早かった。
 すぐさま市長の不信任案が提出され、全員賛成による可決がなされた。
 枯田市長は失職し、再選挙が行われることになった。
 
 立候補したのは桜田ただ一人だった。
 無投票で当選すると、濡れ衣を証明することができた彼は一躍ヒーローになった。
 そして、夢開市の未来を双肩に担う権利を手に入れた。

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