あのね、わたし、まっていたの  ~新編集版~
 その日がやってきた。
 待ち望んでいた日がやってきた。
 特別な人たちと会う日がやってきた。
 それは三文字悪ガキ隊。
 建十字と横河原が久々に帰ってくるのだ。
 
「久しぶり」

 空港で四人の笑顔が弾けた。
 建十字と横河原を成田空港で出迎えたわたしと奈々芽は、建十字が手配してくれていた特別仕様のリムジンに乗って都内の会員制海鮮居酒屋に向かった。
 建十字と横河原が一般の客と顔を合わせなくて済むように、奈々芽が予約してくれた店だ。
 
 車が裏口に横付けすると、着物姿の仲居さんが迎えてくれた。
 そして、他の客に顔を合わせないで済むようになっている専用の通路を通って部屋へ案内された。
 有名な芸能人がお忍びで利用するだけあって、プライバシーへの配慮がなされているようだった。
 
「球人と秀人が見つかったら大変な騒ぎになるからな」

 奈々芽が、したり顔で二人に目配せをした。

「助かったよ。でも、よくこんなところを知っていたな」

 サングラスを外した建十字が、情報通の奈々芽に驚いたような目を向けた。

「まっ、色々あるからね」

 意味深な笑みを浮かべて奈々芽がはぐらかした。

「ところで、綺麗になったな。それに、女っぽくなったし」

 横河原がいきなりわたしをからかった。

「いや~、俺も久しぶりに会ったけど、本当にいい女になったよな」

 奈々芽が追随した。

「バカ!」

 わたしは二人の頭を殴る仕草をした。

「お~怖っ」

 二人は両手で頭を守るふりをした。

「もう~」

 わたしの声に三人が笑った。
 わたしも笑った。
 気の置けない仲間との心地良い時間が始まった。

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