あのね、わたし、まっていたの  ~誰か声をかけてくれないかなって~ 【新編集版】
スポーツ専門中学校
       ◇ スポーツ専門中学校 ◇

「夢開市って、君が育ったところだったよね」

「はい。今もそこに住んでいます」

「ご両親と?」

「そうです。三人で住んでいます」

 育多会長とそんな話をしながら、市長選で初めて桜田の公約を聞いた時のことを思い出していた。
 桜田が第一声を発した夢開中央商店街広場に、わたしはいたのだ。
 4人しかいなかった聴衆の一人がわたしだった。
 
「当選させていただければ真っ先に教育特区を申請し、何処にもない素晴らしい学校を創ります。明日の夢開市を、ひいては、明日の日本を担う優れた人材を輩出する夢開学園都市計画を必ず実行します」と締めくくった桜田の演説に心が震えたことを鮮明に覚えていた。
 地元にスポーツ専門中学校を創ることができるかも知れないと思うと、興奮を抑えることができなかった。

 育多会長から面会するようにと指示を受けたわたしは早速アポイントを取り、夢開市役所へ向かった。

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