御話紡-短編集-
皓も厘の手をぎゅっと握りしめる。

「独りでいるしかなかった空で奇跡に出会えた瞬間だよ?厘にはそれが解る?」

「皓……」

「大袈裟かもしれないけどさ……それくらい感動的なことだってあるんだよ」

まっすぐに厘を見つめる。

すると意外そうに目をぱちくりと丸くしている厘がいた。

「……なに?」

少し照れくさくなって、皓は不意に目をそらす。

「皓がそんな風に言葉にしてくれることって珍しいなぁ……と思って」

小さく微笑んだ厘が、離れようとした皓の手をつなぎ止めようと、力を込める。

「私は嬉しいの。皓に出会えたことやこうして手をつなげること、ただ近くにいるだけでも」

幸せだよ。と厘が呟く。

それが耳にくすぐったくて、皓は自由に動かせる方の手で自分の頬を小さくかいた。

「幸せ……か」

この気持ちが……厘と一緒にいて満たされるこの胸の暖かなものが「幸せ」と呼ばれるのだとするならば、今、自分はこの上なく幸せなんだろうと皓は思う。

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