再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり

美優捨て身の突入

石田くんに指定されたホテルは都心にあり、駅近で目立つ建物だった。
どこかのビジネスホテルに呼び出されるものと思っていた私は、立派なロビーを構えた高級ホテルにまず驚いた。

「すごいホテルね」

逃げ出してして駆け込むには豪華すぎる内装に、私の方が気遅れしてしまう。
大きくはないけれど格式のある重厚な造りは海外資本の三ツ星ホテルで、気軽に普段遣いできるような場所ではない。
そして、部屋はホテルの高層階。

トントン。

迷うこともなく廊下を進みドアをノックすると、すぐに石田くんが顔を覗かせてくれた。

「わざわざすみません、すぐわかりましたか」
「うん、大丈夫」

疾走中にしては元気そうな様子に少しほっとしながらも、だからこそ不思議な気持ちになってしまう。
本当に、石田くんが事件を起こしたんだろうか?正直、私には信じられない。

「どうぞ、入ってください」

廊下で立ち止まったままの私に、部屋へ入るよう勧める石田くん。
一瞬ためらったが、このままここにいてもどうしようもないと私は部屋の中へお邪魔することにした。
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