再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
「吉野チーフ、企画書はこれで大丈夫ですか?」

仕事が始まってしまえばみんな忙しくて私の体調を気遣う余裕なんてない。
特に若手は私に聞きたいことがたくさんあるようで、次々にやってくる。

「うん、よくできてるわ。念のために前年のデータもつけて変更点なんかをわかりやすくしたらいいと思う」
「わかりました、やってみます」

幸いなことに亮平は大きなプロジェクトが進行中で、出張が多くあまり社内にいることがなかったため、私がどんなに働いても文句を言われることもなかった。
だからと言うわけでもないが、私は怪我をする前よりも必死に仕事に打ち込んだ。
そうしていないと、自分が壊れてしまいそうで怖かった。
実際、夜眠ろうと目を閉じれば最後に見た石田くんの鬼気迫った顔が脳裏に浮かぶし、事あるごとに石田くんの声が空耳のように聞こえてくる。
どうやら私は、まだ事件から立ちなおれていないらしい。
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