再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
その後富美加先生と一緒に昼食を食べお茶を飲んだ。

「先生は、どうして・・・」

同じ働く女性として聞きたいことはたくさんある。
特に、なぜ離婚して子供と離れてまで仕事をしようと思ったのを聞きたかった。
でも、亮平のお母様だと思えば、簡単に口に出すことができず言い淀んだ。

「私はね、何不自由なく育ててもらったの。学校を卒業したら父の勧める人と結婚して、家族や家を守っていくようにと教えられた。でもね、私は自分で何かをしたかったの。誰かの娘、誰かの妻、誰かの母ではない私の人生を生きてみたかった。わがままでしょう?」
「そんな・・・」

同じ女性としてその気持ちはわかる。
でも、亮平の気持ちを考えると素直に「わかります」とは返事ができない。

「ずいぶん悩んだのよ。長島の家はお付き合いもあるし、仕事をしながら片手間で守っていける家ではない。思い悩んでちょっと鬱気味になった頃に亮平の父親が言ってくれたの「一生に1度の人生だから、お前にとって何がすべきことなのかを考えろ」ってね。そう言われて、長島の家を出る決心をしたわ。もちろん亮平は連れて行くつもりだったけれど、それは許されなくて・・・」
「そんな・・・・」

子供と離れるなんて、母親にとっては1番辛いこと。だから多くの女性が自分の夢を諦めるんだ。

「でも亮平の父親がとっても理解のある人で、離婚はしても2人で一緒に子育てしようって言ってくれたの。だから亮平は中学を卒業するまで、私の家と長島の家を行ったり来たりして育ったのよ。ちょっと変わった親子でしょ」
「ええ、でも素敵です」

そういう親子関係があるからこそ、亮平はお母様と同じマンションに住もうと思ったのだし、お母様手作りのお弁当を持って会社に行こうとするのだ。

「美優さん、これからも亮平のことお願いしますね」
「はい」

世の中にはいろいろな親子関係があるのだろうと思う。
そういう我が家だってちょっと変わった家だけれど、それはそれで、私にとっていい家族だ。
亮平にとってもこれが一番ベストなのだろう。
これからは亮平のやり方で新たな家族を作っていければいい。
私はそう思った。
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