再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
「美優さん、知っていますか?」
「何を?」

帰り支度をしようとした私を、デスクの前に立った千穂ちゃんが見つめている。

「今女子たちの注目は、営業企画室に配属になったイケメンなんですよ」
「え、どういうこと?」

先日、営業企画室に実習生の男性がやって来ると聞いた。
確か期間は半年で、どこか大きなデパートからの出向だと聞いたけれど・・・

「その人、四つ星デパートの御曹司だそうです。だから、今はみんなその人のことに注目しているんです」
「へー」

四つ星デパートは全国に何店舗も構える有名企業、そこの御曹司なら注目を集めるのも納得だ。

「それに、システム管理室には元モデルだったっていう美形な新人もいますし、他にも何人か御曹司やお坊ちゃんがいるらしいです」
「ふーん、そうなんだ」

うちの会社も大所帯だから、色々な人がいるのだろう。

「だから、部長のことはみんな忘れていると思います」
「え?」

なるほど、千穂ちゃんの話はここに行きつくのか。

「部長はイケメンだし、何しろうちの次期社長ですから女子の注目が集まるのは変わらないと思うんですが、あれだけはっきりと交際宣言されると、さすがにもう誰もアタックはしません。だから、美優さんは堂々としていてください」
「そう、よね」

確かに千穂ちゃんの言うとおりだ。
私は少し自意識過剰だったかもしれない。
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