再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
その後も、亮平は慣れた様子で会場内を回っていく。
誰にでも笑顔でスマートに対話していく姿は、私の知らない亮平を見ているようで不思議な気分だった。
それと同時に、私は亮平の隣りに立つことが少しだけ不安になった。

私自身、人間は生まれ持った才能よりも育った環境だと信じている。
どう生きるかによって人は変われると思う。
でも今私がいるこの場所は、私が住む世界とは違う気がしてならない。
何気なく行われる政治や経済の話も、音楽や美術など芸術の会話も、すべてが異世界のものに感じられた。

「|Ryohei: It's been a long time since I've seen you Are you coming to the U.S. again《亮平久しぶりだね、またアメリカに来るんだろう》?」
「|Oh, I'll go when spring comes.《ああ、春になったら行くよ》」

ん?
たまたま聞こえてきた会話が耳に止まった。
春になったら・・・
大阪支社から転勤してきたばかりの亮平だが、来年の春には海外支社、おそらくアメリカ支社への異動がほぼ確実と言われている。
そうなればこの関係だって終わるかもしれないと頭では理解しているのだが・・・私は2年前亮平が大阪に転勤になった時のことがフラッシュバックしてしまった。
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