再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
私にとってあの事件は大きな古傷で、触れると心も体もきゅっと固まってしまう。
決して憎いとか怖いとかそういう感覚ではなく、切ないような苦しいようなそんな気持ち。
きっとこのメールで石田くんが伝えたかったのは、私への謝罪の気持ちと今自分がちゃんと前を向いて歩きしたんだということ。それがわかって私はほっとした。
だからこの涙は悔し涙ではない。どちらかと言うと安堵感から来る涙だ。
石田くんが自分の人生を歩み出そうとするように、私も今亮平とともに生活している。
来年春アメリカへ行ってしまうことが決まっている亮平と、この先どう生きていくかは考えなくてはいけないことだが、おそらくもう私は亮平なしでは生きていけない。

「春になったら・・・」

考えていたらつい言葉に出た。
私の中で、すでに気持ちは決まっている。
亮平が私のために東京へ戻ってきてくれたように、私は亮平のそばで暮らすことを望む。

「美優、どうした?」

少し早足でやって来た亮平の心配そんな顔。
きっと私が姿を消したから探しに来たんだ。

「亮平」

私は亮平の前に立ち胸元に顔を埋めた。

「・・・美優」
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