再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
顔を洗い、歯磨きをして、身支度を整える。
朝食は昨日の夕方スーパーで買ってきたパンがあるからそれを食べよう。
セール品だったけれど、私の好きなチョコクロワッサンだったからコーヒーにも合うはず。

「あっ」

洗面台の前で鏡を見て、思わず声が漏れた。
目覚めたばかりの私の目が真っ赤に充血していたのだ。

まるで泣いた後のように真っ赤になった私の目。
もちろん流行りの病気にかかった覚えはない。
では何が原因なのかと記憶をたどってみると、ひとつだけ思い当たることがあった。
それは・・・遠い日の記憶。
都内の私立大学を卒業し、自ら希望して入社した総合商社で同期として出会った忘れられない人。
恋とも呼べないような関係だった彼のことを今でも時々夢に見る。
そう言えば、昨日の晩も彼の夢を見た気がする。
新年度始まりの四月。
出会いや別れの季節だからこそ、きっと彼のことを思い出したんだ。

「いい加減忘れないといけないのに」

自分に向かってつぶやくと、感情を振り切るように溢れかけた涙をぬぐい、私は出社の用意を急いだ。
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