再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり

SIDE亮平  父との約束

都内でも一流と言われる五つ星ホテルのスウィートルームで、スヤスヤと寝息を立てる吉野美優を見ながら俺はなぜか幸せを感じていた。

「相変わらず細いな」

ダイエットをしているはずもないのに細くて華奢な体は、抱き抱えて運ぶのに何の苦労もなかった。

「長嶋、お水」

こうやって無意識に出る言葉に、自分の名前があることが無性に嬉しい。
こいつは意地っ張りだからこんな時にしか素直になれないと、俺にはよくわかっている。

「ほら、水だぞ」
「うん、ありがと」

半分寝ぼけたままペットボトルの水を口にする彼女。
きっと、自分が今どんな状況にいるのかさえわかっていないはずだ。
それにしても、なんでこんなにも頑張るんだろう。
同年代の女子たちみたいにもっと楽な生き方を選べばいいのに。しかし、それもまた彼女らしいなと俺には思えた。
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