再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
「ねえ長嶋、今日のことは2人の秘密よ」

デザートのメロンを美味しそうに食べながら、わかっているわよねと俺を見る不安そうな表情。

「ああ、お前が酔いつぶれて俺と東京タワーホテルに泊ったことは内緒だな」
「そっ・・・わざわざ言わないで、意地悪ね」

嫌味なのも意地悪なのも重々承知している。
ただ、俺もこのチャンスを逃すわけにはいかないんだ。

「大丈夫、今日のことは誰にも言わないよ。ただ、その代わりに頼みがある」
「頼み?」

不安そうな顔で彼女が俺を見る。

「二人の時には名前で呼んで欲しい」
「名前?」
「うん、『亮平』と『美優』」

俺はそれぞれを指さしながら口にした。

「なんで?」
「だって、俺達同期で友達だろ?」
「それはそうだけど・・・」

なぜだろう、一瞬彼女の顔が曇った。

「会社では部長でも何でもいいから、仕事以外の時には名前で呼んでほしいんだ。ダメかな?」

少々強引な気もするが、一緒に走り回った新人時代を懐かしく思う気持ちは、彼女も同じであってくれると信じて言ってみた。

「・・・いいわ、わかった」

少し考えてから、承知してくれた。
俺の本音を言えばすぐにでも告白したいところだが、今はゆっくりと二人の距離を縮める方がいいだろう。
焦りは禁物だ。

「じゃあ美優、朝食を食べたら仕事に行くぞ」
「うん」

ちょっとはずかしそうに返事をする美優が愛おしくて、俺は抱きしめたい衝動を抑えるのに必死だった。

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