再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
私はシングルマザーの母に育てられた。
もともと東京生まれだった母の実家には祖母がいて、私達はずっと３人暮らしだった。
母もパート勤めをしながら愛情深く私を育ててくれたし、祖母もいたことから寂しいと思うこともなく幸せに育った。
しかし、中学に上がる頃、自分に父がいないのが人と違うのだと知った。
そのことについて母は、「事情があって、結婚はできない相手だった」とだけ教えてくれた。
その後も父親を探そうと思った事はなかったが、高校生の時祖母が亡くなり、四十九日が終わった頃に1人の男性が家を訪ねてきた。
顔を見た瞬間、この人はテレビで見かける大物政治家だと気がついた。
秘書もつけず1人で訪れた男性は祖母の遺影の前で手を合わせ、そして帰りがけ私に気がつくと驚いた顔をして見つめていた。
私も母も何も言わなかったが、きっとこの人が自分の父親なのだろうと感じた。
思えば、私は小中高と都内の私立校に通わせてもらった。
当時は何も考えていなかったが、母1人の給料で賄える学費ではなかったと思う。
焼香に訪れた男性を見て、私は何か腑に落ちた気がした。
その後大学の進学の際にも学費の高い私立女子大学を勧められ、やりたいこともなかった私は母の言う通りに進学した。
ただ、大学卒業の時に母の希望する事務職ではなく営業の現場を選んだ。
それは母に対する反抗だったと思う。
私は母のような生き方はしないで、自分で生きていくと決めた。
だから、男性に頼るような生き方はしたくない。
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