BG様の一途な愛情
* * * *
紘太の退院の時刻ははっきりとわからなかったが、会計作業がスムーズに進めば午前中には退院出来るはずだった。彼が来たらこのまま昼食を食べてしまえばいいだろう。
店の一番奥の半個室の席に案内された麻里亜は、アイスコーヒーを飲みながら紘太の到着を待っていた。
フランスの田舎の田園風景のような店内は、オムライスとパフェが有名だった。麻里亜も友人と度々訪れていたが、帰りにはオススメのパンを購入するのが恒例となっていた。
しかし今日は店内のディスプレイに見惚れることもなく、緊張した時間が流れていた。紘太にどこまで話せばいいのか、どう伝えればいいのか、そのことをずっと考える。
ボーっとグラスのコーヒーを眺めていたため、こちらに向かって歩いて来る紘太の姿にも全く気付かず、彼が麻里亜の向かい側の席に座ったことで、ようやくハッと我に返った。
「遅れてごめんね。ってか、そんなに美味しいコーヒーなの?」
白いシャツに黒色のカーディガン、グレーのチノパン姿の紘太が目に入り、麻里亜の胸が大きく高鳴った。やはり麻里亜のタイプの男性の原点は紘太であることは間違いないようだった。
「えっ、あっ、うん……まぁ美味しいよ」
「じゃあ俺も頼もうかな。でもそれよりお腹すいちゃった。病院の食事、量が少ないからさ」
紘太が八の字眉でお腹を叩くのを見て、麻里亜は思わず吹き出してしまう。
「足りなかった?」
「俺、毎日あの倍は食べるからね」
「本当? あっ、でも遊びに行かせてもらっていた時、食べ過ぎておばさんによく怒られてたよね」
テーブルいっぱいに並べられたお皿が、紘太が来た瞬間に空になっていくため『これはあんたのための食事じゃないの!』と言われている姿を何度も目にしていた。今もあの頃のままなのだと思うと、安心と同時に笑いが込み上げて来る。
「麻里亜ちゃん、よくお母さんの手伝いしてるから料理上手って言ってたじゃない。今も作ったりする?」
「一応自炊は心がけてるよ」
「おっ、じゃあ作り過ぎて食べて欲しい時はいつでも言って! すぐに食べにいくから! あっ、でも彼氏に悪いか」
「彼氏はいないし……まぁ、考えておく」
憧れていた人からそんな簡単に『食べにいく』とか言われたら、つい意識してしまいそうになる。
前に妹みたいな存在だって言われたことがあった。麻里亜自身も兄のように思っていたから、そう言われたことには納得した。しかしそれ以上の感情も感じていたから、少しだけ胸が痛んだ。
紘太の退院の時刻ははっきりとわからなかったが、会計作業がスムーズに進めば午前中には退院出来るはずだった。彼が来たらこのまま昼食を食べてしまえばいいだろう。
店の一番奥の半個室の席に案内された麻里亜は、アイスコーヒーを飲みながら紘太の到着を待っていた。
フランスの田舎の田園風景のような店内は、オムライスとパフェが有名だった。麻里亜も友人と度々訪れていたが、帰りにはオススメのパンを購入するのが恒例となっていた。
しかし今日は店内のディスプレイに見惚れることもなく、緊張した時間が流れていた。紘太にどこまで話せばいいのか、どう伝えればいいのか、そのことをずっと考える。
ボーっとグラスのコーヒーを眺めていたため、こちらに向かって歩いて来る紘太の姿にも全く気付かず、彼が麻里亜の向かい側の席に座ったことで、ようやくハッと我に返った。
「遅れてごめんね。ってか、そんなに美味しいコーヒーなの?」
白いシャツに黒色のカーディガン、グレーのチノパン姿の紘太が目に入り、麻里亜の胸が大きく高鳴った。やはり麻里亜のタイプの男性の原点は紘太であることは間違いないようだった。
「えっ、あっ、うん……まぁ美味しいよ」
「じゃあ俺も頼もうかな。でもそれよりお腹すいちゃった。病院の食事、量が少ないからさ」
紘太が八の字眉でお腹を叩くのを見て、麻里亜は思わず吹き出してしまう。
「足りなかった?」
「俺、毎日あの倍は食べるからね」
「本当? あっ、でも遊びに行かせてもらっていた時、食べ過ぎておばさんによく怒られてたよね」
テーブルいっぱいに並べられたお皿が、紘太が来た瞬間に空になっていくため『これはあんたのための食事じゃないの!』と言われている姿を何度も目にしていた。今もあの頃のままなのだと思うと、安心と同時に笑いが込み上げて来る。
「麻里亜ちゃん、よくお母さんの手伝いしてるから料理上手って言ってたじゃない。今も作ったりする?」
「一応自炊は心がけてるよ」
「おっ、じゃあ作り過ぎて食べて欲しい時はいつでも言って! すぐに食べにいくから! あっ、でも彼氏に悪いか」
「彼氏はいないし……まぁ、考えておく」
憧れていた人からそんな簡単に『食べにいく』とか言われたら、つい意識してしまいそうになる。
前に妹みたいな存在だって言われたことがあった。麻里亜自身も兄のように思っていたから、そう言われたことには納得した。しかしそれ以上の感情も感じていたから、少しだけ胸が痛んだ。