BG様の一途な愛情
5
 マンションに着くまでの車の中で、麻里亜は案の定うたた寝をしてしまった。車のエンジン音が止まった音で、慌てて目を覚ます。

「ご、ごめんなさい!」
「なんで謝るのさ。しっかりと寝顔を拝ませていただいたから、気にしなくて大丈夫」
「そんなこと言われたら逆に気になるじゃない!」

 そんな言葉を交わしながら、コインパーキングに止めた車を降りて、麻里亜のマンションに向かう。

「ドアを開けたら、麻里亜ちゃんはいつもと同じように過ごして。それから俺にはなるべく話しかけないように。わかった?」
「わかったけど……いつも帰ったらすぐにシャワー浴びるの。どうしたらいい?」
「……浴びておこう。怪しまれたら大変だから」

 エレベーターが三階に到着し、二人は麻里亜の部屋の前まで歩いて行く。手に手袋をはめている紘太を横目に鍵を開けると、中の様子を確認しながら中に入った。

 今日はどうだろうーー靴は並んでいる、ぬいぐるみの位置も変わっていない。机の引き出しを開けてみたが、変化はなかった。

 そしていつものように部屋を見て回るが、怪しい点は見当たらない。麻里亜は紘太に目配せをし手から、首を横に振った。

 すると紘太は先ほどの黒いカバンから、トランシーバーのような黒い機械を取り出してスイッチを入れる。その瞬間、部屋に電子音のようなものが響き渡ったため、麻里亜は危うく大きな声を出しそうになった。それを制するように、紘太が口元に人差し指を立てた。

 慌てて両手で口元を押さえた麻里亜は、紘太に向かって頷いてみせた。彼は機械を持ったまま、狭い部屋の中をくまなく観察しがら歩き回る。ぬいぐるみに当てたりもしたが、大きな反応はない。

 その時、テレビの裏側のコンセント付近で機械がとてつもなく大きな音を立てたのだ。紘太は機械の電源を切ると、コンセントに装着されていた三口の電源タップを取り外した。そしてそこに付いていた全てのコンセントを外し、電源タップだけになったものを観察すると、Aと書かれたシールが貼られているのが見えた。紘太は黒いカバンから取り出した工具を使って、中をこじ開ける。

「やっぱりな……」

 紘太が電源タップの中を確認した瞬間、彼の口からため息が漏れた。
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