BG様の一途な愛情
「喋って大丈夫なの……?」
「あぁ、ごめん。麻里亜ちゃん、この電源タップって見覚えある?」

 紘太の手の中にある白い電源タップを見て、麻里亜は首を横に振った。

「見覚えない。だってそもそも、そこに電源タップなんて挿してないし」
「だよね。使ってるコンセントが二つしかないのに、これはどう見たって違和感がある。ちなみに電源に差して使うタイプだから、向こうにはもう聞こえていないはずだよ」

 電源タップをジップロックの袋にしまうと、再び黒いバッグに入れる。

「聞こえって……」
「これね、盗聴器。ないとは思うけど、これを仕込んだ奴の痕跡がないか調べてもらうよ」
「えっ……じゃあやっぱり誰かが部屋の中に入ったってこと?」
「盗聴器を仕掛けるためには入らないとね。ただ気になるのが、これって外部で音が拾えるタイプなのに、なぜ何度も部屋に戻る必要があったんだろう……」

 考え込む紘太から目を逸らし、麻里亜は口を閉ざし、下を向いてしまう。自分の部屋に誰か知らない人が入った上、部屋の音が盗聴されていた。そんな怖いことが、この部屋の中で当たり前に行われていたなんてーー。

「盗聴器……まだあるのかな……」
「いや、さっき見た感じなら、たぶんこの一つだと思うけど……シャワー、どうする?」
「は、入るわけない! こんな気持ち悪い場所にいられないよ! 今日はどこかホテルがどこかに泊まる……それで明日、新しい部屋を探しに行く……」

 麻里亜はクローゼットの中のキャリーバッグをとりだすと、服やパジャマ、下着に化粧品やドライヤーなど、手当たり次第に投げ入れていく。恐怖をひた隠すような行動だったが、紘太にはしっかりと見透かされていた。
< 18 / 36 >

この作品をシェア

pagetop