BG様の一途な愛情
「麻里亜ちゃん、落ち着いて」
「落ち着いてなんかいられないよ! 気持ち悪すぎる! こんなところ、早く出て行きたい……」

 へたへたとその場に座り込んで泣き出した麻里亜を、紘太は力強く抱きしめた。彼の香りに包まれ、涙も嗚咽も止まらなくなる。

「盗聴器が見つかった以上、とりあえず警察に行って被害届を出すべきだよ。そうすれば捜査をしてくれるはずだから。それにこの盗聴器も知り合いに頼んで調べてもらう。」

 今まで何度も警察に行くことを考えたが、証拠がないのに、相手にしてもらえるとは思えなかった。だが今はその証拠が手元にあるのだ。

「……今から?」
「今から」

 紘太の目は真剣だった。夜勤明けで疲れもピークだったが、そうも言っていられない状況なのだと察する。

「……わかった。警察に行く」
「それからもし麻里亜ちゃんが嫌じゃなければ、うちに来ない?」
「……えっ?」

 どんよりと暗い気分になっていたところに、思いがけない言葉が耳に入り、その意味を理解するのにしばしの時間を要した。

「ホテルに泊まったって、また一人になる時間が来て、もしかしたら不安に駆られるかもしれない。うちに来れば麻里亜ちゃんを一人にしたりしないし、不安な時はそばにいてあげられる」
「でも……」
「幸い、親父と兄貴から『抜糸が終わるまでは休んでいろ』って言われててさ。家探しも手伝えるよ」
「でも……迷惑じゃ……」
「迷惑なわけないだろ。むしろ看護師さんが傍にいたら、こんなに心強いことはないじゃないか。だから俺のところにおいで。麻里亜ちゃんのこと、俺に守らせて欲しい」

 なんて心強い言葉だろうーー素直に彼の優しさに甘えられない自分は嫌だけど、その優しさを受け入れやすいように彼に誘導してもらえることは有り難かった。
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